もっけ(終)

思いのほかいい話が多かった。しかしなんというか、イイハナシダナーで片付けたくはない。それくらいには気に入っている。覚えている範囲では23話が特に好きだ。ミズキ関連のエピソードは、ミズキの元気さや実直さなどその辺りに楽しみがあり、それはこの作品世界の舞台である盛夏にマッチして、その日差しに陰を落とす妖怪を際立たせて、どれもなかなかに好きだ。一方、シズルの話数には別の面白さがある。その最も顕著な回が23話だった気がするのだ。ミズキとの大きな違いは、シズル関連の挿話ではシズルの内面に眼が向けられていることだろう。川澄さんによって語られるシズルの内面は、ミズキとは違い見透かせない闇がある。そして23話はシズルの内面から「闇」が腹を食い破って這い出でてくる回だった。そして、シズルが内面を激しい感情とともに吐露する回でもあった。これは見えないものをなんとかして見たい、シズルの闇を見透かしたい俺にとって一種のカタルシスだったんだろう。余談ながら、23話でお祖父さんが気付け薬と称する何か白い液体をシズルが飲んだときにこぼした「苦っ」が少しエロティックで、それも気に入っている。やっぱお祖父さんは鬼畜だなあ。
全話のコンテを西田監督がきっているのも、この作品の統一された空気を作り出すのに貢献しているのだろう。わざとらしい構図が少なく、ごく自然な視点から日常と異常の両方を見せてくれたんじゃないかなあ。あと、非常に音楽が良かった。使いどころが上手いというか。いつの間にか耳の奥深くに入り込んでいて、ストーリーを盛り上げていた。
声優も申し分ないと俺は思う。最初はどうかと思った水樹奈々の演技の音域も、あの天真爛漫なミズキを演じるには必要不可欠なものだった。通常、水樹奈々が少女を演じる音域では、ここまでのパワーは不自然だろう。よく弾む水樹奈々が映えるのも、物静かな川澄さんあってこそ。川澄さんの良妻賢母的少女芝居にはケチのつけようがない。堀勝之祐京田尚子の働きには言及するまでもないかな。あー23話で平野綾桑島法子に板挟みにされる川澄さんというバランスには、少し思うものがあったなあ。あへあへ。