我々のアニメ研究の基礎付け・その2

準備だった気もするが、基礎付けにした。基礎付けの基礎付けくらいが正確かもしれない。Grundlegung。Grund=底/基礎/理由/根拠。Grundがなければ、そこにあるのは底無しの深淵(Abgrund)でしかない。俺達は落下し続け、這い上がってくることが出来ない。
さて、今回は多少まとまったプランについて書く。これは俺個人の考えではなく、数名のSSA会員(幻界、ハヤミ、俺など)の意思に基づくものである。つうか、これ、NTさんが読んでくれればいいものでしかないなあ。

問題意識

我々のアニメ研究はある問題意識に動機付けられている。それは日常では当然と見なされ、看過されてしまうものであるが、傷つきやすいガラスのハートを持つ我々にはそれに耐えられず憤死しそうになるところのものである。つまり、人々がバラバラにアニメを見て別々の感想を抱き全く分かり合えない、という状況、さらに言えば、意見が食い違った際に薄笑いを浮かべながらさもそれだけが正解であるかのように呟かれる「人それぞれですからね」への退却を、我々は許さない。問題だと捉えている、というのみではなく、爆裂的に破壊するつもりである。
「人それぞれ」が一つの解答であることは積極的に認めなければならないだろう。しかし、それだけだと思ってしまっては他人が存在することの意味が失われてしまわないか。人-間で生きるということの可能性を我々は取り戻そうとしている。

目標

一言で言ってしまえば「我々の基礎付け」である。「人それぞれ」という結び合えない状況を突破するためのGrundを我々は創造する。何とでも言い換えられるが、我々が分かり合えるための新しい価値付けの基準を画定すると、いうとより具体的だろうか。「人それぞれ」を破壊しつくした、その瓦礫の上に俺達は新しい価値の塔を打ち立てる。
こう言ってみて、この試みが全体性を優先し個を抹殺する暴力に結びついてしまうのではないかと直感的に俺は恐れた。しかしそうはならないだろうと希望的に予測している。この試みは「個」を纏め上げて「全」にしようとするものではない。その先を目指している。
個と全の対立の先にあるものがGrundになるだろうと俺は考えている。和辻哲郎は『人間の学としての倫理学』の中で「人間とは「世の中」自身であるとともにまた世の中における「人」である。従って「人間」は単なる人でもなければまた単なる社会でもない。「人間」においてはこの両者は弁証法*1に統一されている」と述べた。「人間」を創造する試み、というと何か面白い気がしてくる。正確ではないかもしれないが…。

方法

現象学の方法を使おうなどと俺が言い出したりして、いろいろと錯綜したが、まとめてみるとすごくシンプルで、まるで現象学的ではない、むしろ我々は既にこういうことをしてきたのではないかと思ってしまうような簡単な方法を採用することになった。
まず、意味を取り出す。アニメを見ていると人は同じものを見ていても異なる感想を抱く。その感想を「意味」と呼ぶ。その意味を可能な限り列挙する。そして同時に、その意味の背後に働く「志向性」についても考えてみる。どうしてそのような意味を感じ取ったのか、その分析である。*2
ここまでは個人でする作業である。そしてここからが集まってする作業だ。個人が列挙した意味と志向性をみんなで吟味する。吟味というか否定する。片っ端から否定して否定して否定しつくす。これがこの方法の特徴である、つまり破壊だ。懐疑論的であるかもしれない。多分、壊しつくしてもなお残るものがあるだろう。そこを土台にして、新しい俺達のGrundを創造する。目論見。最初は小さな普遍性しか持たないだろうが、それは仕方ない。しかし、実際はここまでラディカルなものにはならないかもしれない。おそらく、ある程度妥当だという同意がなされれば、それをGrundとするだろう。
なんだかもう少し深い方法論を考えていた気もするのだが、よく覚えていない。補足してくれ>幻界、ハヤミ。

実践

上に書いた方法を、自主ゼミと称する集まりで実践していきたいと思う。最初の4回は全力でやってみようということになった。
・時間:毎週土曜日夕方
・場所:NTさん宅
・参加者:NTさん(座長)、幻界、ハヤミ、俺。
・第一回の素材:新世紀エヴァンゲリオン第1話のOPからAパート終了まで。
・レポーター:参加者全員

場所も時間も最初の4回についてのもので、その後、変更する可能性がある。
メンバーはあと一人くらいは増えても(NTさん宅の収容能力的に)大丈夫かなと思っている。どちら様でも興味を持たれた方はご連絡下さい。SSA会員でもOKだということにしています。
レポーターとは、列挙された意味と志向性についてレポートする人の意。予めブログなどにあげた上で印刷して持ってくる、ということになっている。

その他

特になし。何か書き忘れたことがありそう。
質問・意見、歓迎します。

*1:弁証法という言葉に正と反が合するというありえない緊張状態を感じ取ってもらえると良いかもしれない。

*2:この段階で例えば映画批評や心理学の知識を有している人は、それを原因として一風変わった意味を抱き、それを挙げることができるようになるのかなと思うが、それは少し話がそれたか。