『ONE PIECE FILM STRONG WORLD』感想

遅ればせながら見てきたので感想。面白かった。
確かに、既にどこかで見たような『ONE PIECE』感があるのだが、あまりそれは気にならなかった。全編を通して、「見所」が連続して存在するからだろう。極論であるが、映画はモーションによってエモーションを描ければそれだけでいい、それだけで楽しいのだ。ルフィたちが瑞々しく暴れまわること、そして雄々しく佇むこと、粛々と歩くこと、それだけで映画は映画になる(むろん「それだけ」が決して容易ではないことには注意しなければならない。)。前半は怪獣映画である。奇怪な動物が次から次へと現れては、特異な運動をめまぐるしい勢いで披露する。それにワクワクしなければ、映画を見る意味がない気がする。静止画か文字でも眺めていれば良い(これも極論だが)。映画半ばあたりで、シキと対峙するルフィたちの格好良さもすばらしい。アングルと画角の巧妙さによるものだろうが、ルフィたちがただ並んで立っている、それがすさまじく格好いい。ゾクゾクするんだ。後半はヤクザ映画である。ヤクザ(海賊)の親分であるシキの和風の屋敷に、さながらマフィアのようにスーツに身をかためたルフィたちが乗り込んでいく。そのシークエンスも、やっぱり格好いい。すごく好きだ。屋敷の縁側を並んで歩くルフィたち、それにもう情動が掻き立てられてしょうがない。尾田栄一郎のことばを引き受けつつ言えば、まさに少年が楽しめそうな映画だ。衣装も特筆すべきものがある。この作品ではメインのキャラクターたちが、3,4度は衣装を変えるのだが、そのこと自体も楽しいことだし、それぞれの衣装もすばらしい。特に、ナミとロビンがエロい。とても良い。ドキドキするじゃない。
この作品では、ナミのことばが最後まで封じられている。けれども、この作品では、ことばを封じられる登場人物はナミだけではない。ジェスチャーによってコミュニケーションを図ろうとするDr.インディゴと、人語をあやつらないビリーもまた、ある意味ではそうだろう。奇妙なのは、それまで全くDr.インディゴのジェスチャーを解さなかったシキが、あるタイミングではそれを解してしまうことである。それは、ルフィがナミのことばを聴かずに暴れだしてしまう、その後のことなのだが、この相違が興味深い。いや、相違ではなく類似なのかもしれない。二人の海賊は、仲間のことばを聴かない。聴かなくとも、解してしまう。それでも差異は消え去らないか。一応コミュニケーションするシキと、そもそも聴かないルフィ。ルフィの王者感がかもされる気も。


気づいたが、映画館で見た映画はなんでも面白い気がする。映画館はすごい。